さすがに見てわかるって。
泣き叫ぶきのことフェンス越しにたたずむ地味眼鏡ちゃん。

どーにかしなきゃ。
でも体が動かない。

…あれ?俺止めようとしてる?他人なのに、



そりゃそうだ、
いくら他人でも人が今ここで死ぬ瀬戸際に立ってんだもん。
一応止めなきゃ、止めなきゃだけど体が。


きのこが泣きながら叫んでる。

「千里ちゃん!お願い!ほんとやめて!」

ああ、あの地味眼鏡ちゃんは千里ちゃんて言うんだ。
…なんて、阿呆だろ俺、今名前とかどーでもいいんだよ早く止めろよ、いやだって体が。

「いいから!いいから私のことなんかほっといて!
もう嫌なの!こんな人生!嫌なの!」

千里ちゃんも泣き叫んでる。

あと1歩踏み出せば確実に彼女はさようなら。
4階立て校舎の下はコンクリート、奇跡なんてきっと起こりゃしないだろう。

きのこは必死に食い止めるけど千里ちゃんは食い下がらない。

「ほんと今まで仲良くしてくれてありがとう。私、生まれ変わったら杏ちゃんになりたいな。」

「えっ…ちょっと………
やめてよ!!!千里ちゃん!!!ねえ!?」

「…ごめんね…ほんとごめんね、
…っ…ごめなさい。」

「待って!!!嫌だよ!!!行かないでよ!!!」

きのこの悲痛な叫び声も千里ちゃんの耳には心には届かないのだろうか。

そして彼女は笑顔で言った。

「…さよなら

杏ちゃ「ちょ!おいこら待てよ馬鹿!」