例えば、


明日からこの公園のベンチが全て犬小屋になったらどうする?


そんな質問をしたとする。



きっと君はこう答えるだろう。


「知らないよ。なるわけないじゃん。」




ありもしない空想をバカにする君。

だけど、夢だけは人一倍語るくせに。




そうか。あれは空想をバカにしていたわけじゃないのか。
俺をバカにしていただけか。



「卑屈。今にハゲるよ。」



鼻の頭に思いっきりシワを寄せながらそう言う君の顔が見える。



好きなものを好きだとハッキリ言える君が羨ましかった。


好きなものを自分の手に入れる事のできる君が眩しかった。




俺の好きなものはアーモンド。




君はいつまでその事を覚えていてくれるだろうか。




なんだ?この回想は。


これじゃ…、まるで…。






これは今からほんの少し前の話。


蝉がうるさくわめき始めた午後。



最後の夏が始まった。