「なんでないてんの?まずい?」 ウチはすぐ顔を横に振ったあと、一言呟いた。 「おいしい…」 「良かった」 卵焼きなんて何年ぶりだろう。 母親の味なんてもうとっくに忘れてしまった。 小さい頃に一度だけ卵焼き食べた事がある。 でもその時、母親はそばにいたのか、どんな目でみていたのか、味も顔もなにも覚えてない。 この卵焼きみたいにおいしかったのかな。 薫と薫の母親は優しく見守ってくれた。