俺を見るその瞳がどうしても頭から離れなかった…
まるで、独り寂しく捨てられた猫のように思えて拾ってあげたかった。
「ねえ早良、家帰るから手離して?」
俺はずっと椎名の腕を握っていた。
でも、椎名がまた何処かに行きそうで、誰かにまた連れてかれそうで離せなかった。
「なぁ、何のため抱かれてんの?」
言うつもりじゃなかった。
だけど、口が先に出てしまった…
椎名は黙って俺を見て言うんだ。
「あんたに関係ないじゃない」
そう言って手を振り払って人込みの中に消えていった
俺は追いかける事が出来ずに
そこに立ちすくんだままだった。
廻りの音なんか聞こえない…
この世に誰もいない世界にいるみたいに。
どうして余計なことを訊いたんだろう
なぁ…
お前が誰かに抱かれるなら
俺がお前を抱きてぇよ。