すべて同じとしか言いようがない。全くおれである。
 バスは動き出した。
 おれの周りのすべての時間が止まった。
――嘘だ。嘘だ。ありえない。
 そうだ、おれは夢を見ているんだ。夢とわかる夢をおれは前に見たことがある。これは、夢に違いない。坂の上から自転車の生徒が合羽を着て降りてくる。さっき喧嘩をした野球部の一年である。
「おい」おれは声を出した。彼が夢を覚ましてくれるに違いない気がした。
 確かにその一年の肩のところに手をのばしたはずである。しかし、全く彼はおれに気づくそぶりを見せず下に下っていった。肩の中を通り抜けたように見えたが、いや、そんなことはない。見間違いだ。
――さっきのことでおれを怒って無視をしたのだろうか。それに違いない。学校に行けばいい。そうしたら、先生方がいる。先生方はおれを無視するはずがない。
 まだ、夢は覚めない。いったい、どうしたことか。