その後も、その初老の男性は数人に声をかけたが、どれも大体同じ反応、おれのことが見える人はいないようだった。
「そうか、わかった」
その初老の男性がつぶやく。
「かつて、お前さんの顔を見たことがある人はお前の顔が見えない。私みたいに見たことのない人には見えるようだ。まあ、この推論が正しいか、もっと研究の必要がありそうだ」
月は真上になったころ、その男性の家に泊めてもらうことになった。
『フロイディアニズム研究所』古びた看板がポツリ。四月から毎日バス停まで通っていた通いなれた道にポツリとあった。
――まだ、ここって空き家じゃなかったんだ。
「ほれ、とっとと寝なさい。明日は出かけるんだから」
「どこへ……」
「産婦人科じゃ」
――明日、おれが産婦人科に行く。自分を他人に認知してもらえない、このおじさんを除いて。何が、どうした。明日になったら、何かわかるのか。いや、おれが認知されるのか。そう、…………
おれは眠りについた。
「そうか、わかった」
その初老の男性がつぶやく。
「かつて、お前さんの顔を見たことがある人はお前の顔が見えない。私みたいに見たことのない人には見えるようだ。まあ、この推論が正しいか、もっと研究の必要がありそうだ」
月は真上になったころ、その男性の家に泊めてもらうことになった。
『フロイディアニズム研究所』古びた看板がポツリ。四月から毎日バス停まで通っていた通いなれた道にポツリとあった。
――まだ、ここって空き家じゃなかったんだ。
「ほれ、とっとと寝なさい。明日は出かけるんだから」
「どこへ……」
「産婦人科じゃ」
――明日、おれが産婦人科に行く。自分を他人に認知してもらえない、このおじさんを除いて。何が、どうした。明日になったら、何かわかるのか。いや、おれが認知されるのか。そう、…………
おれは眠りについた。