確かに、後輩たちが、直近に迫った大会に向けて、ここで練習に励む、できることを精一杯やるというのはすばらしいことである。だが、昨日まで、一緒に練習していた仲間が、今、留置所にいるはずなのである。後輩がそのことを気にしている姿をおれは感じられない。
おい、いいのか。お前たちが苦しいのもよくわかる。でも、今、警察で、苦しんでいる仲間もい
るんだ。会いにいくなり、何かしようという気にはならないのか。
みんなで、また優勝しようと誓っていたではないか。それを忘れたのか。
そう俺は声に出すが、おれの声が届くはずがない。全く俺の様子に気づく様子もない。
一人の投げたボールが、必要以上に弾み、おれの方に飛んできた。おれは、とっさに手をだしたが、おれの手をすり抜け、体をすり抜け、壁にぶつかった。
結局、おれは、何もできやしない。ここに、いてもだめなのか。
おれは、いったい今何ができるのだ。
部屋から、出ようとドアの取っ手に手を伸ばす。ちょうど外からドアが開いて、俺は、すんなりと
外にでた。これから、おれは、どうすればいいのだろう。
部室に入っていったのは、生活指導部長だった。
「お前たち、ここで練習していたのか」
「はい。徹夜で話し合いました。これから大会までに何ができるのか。その結果、家にも帰らず、わき目も振らず、できる範囲で練習をしようということになったんです。ここで、練習している分には、学校から制限を加えられることはないと思いました」
「残念だが、大会の出場は、辞退だ。一年生部員が、殺人を起こして、大会に出られると思うか。いいか。ひとり、ひとり、お前らは、勉強の才能はあるんだ。この学校に入試で入ったんだから。今年は、いい投手がいたから優勝できただけ。来年は、甘くない。お前らは、甲子園にでるより、これから勉強したら東大にいける才能を一人、一人が持っているんだ。野球を忘れて、勉強にはげんだらどうだ」
「殺人って……」
それ以上の会話を俺は、聞くことができなかった。中で、何がおきているのか、おれには、知る
すべがない。いや、知りえたとしても知りたくない。
もう、どうにもすべてならないのではないか。
おい、いいのか。お前たちが苦しいのもよくわかる。でも、今、警察で、苦しんでいる仲間もい
るんだ。会いにいくなり、何かしようという気にはならないのか。
みんなで、また優勝しようと誓っていたではないか。それを忘れたのか。
そう俺は声に出すが、おれの声が届くはずがない。全く俺の様子に気づく様子もない。
一人の投げたボールが、必要以上に弾み、おれの方に飛んできた。おれは、とっさに手をだしたが、おれの手をすり抜け、体をすり抜け、壁にぶつかった。
結局、おれは、何もできやしない。ここに、いてもだめなのか。
おれは、いったい今何ができるのだ。
部屋から、出ようとドアの取っ手に手を伸ばす。ちょうど外からドアが開いて、俺は、すんなりと
外にでた。これから、おれは、どうすればいいのだろう。
部室に入っていったのは、生活指導部長だった。
「お前たち、ここで練習していたのか」
「はい。徹夜で話し合いました。これから大会までに何ができるのか。その結果、家にも帰らず、わき目も振らず、できる範囲で練習をしようということになったんです。ここで、練習している分には、学校から制限を加えられることはないと思いました」
「残念だが、大会の出場は、辞退だ。一年生部員が、殺人を起こして、大会に出られると思うか。いいか。ひとり、ひとり、お前らは、勉強の才能はあるんだ。この学校に入試で入ったんだから。今年は、いい投手がいたから優勝できただけ。来年は、甘くない。お前らは、甲子園にでるより、これから勉強したら東大にいける才能を一人、一人が持っているんだ。野球を忘れて、勉強にはげんだらどうだ」
「殺人って……」
それ以上の会話を俺は、聞くことができなかった。中で、何がおきているのか、おれには、知る
すべがない。いや、知りえたとしても知りたくない。
もう、どうにもすべてならないのではないか。