外に出ると朝の涼しい風が吹いた。もう春だというのにまだ少し肌寒い。

今日は高校の入学式だ。
レベルはそこそこ。志望動機は徒歩で通えるという、くだらない理由からだった。

のんびり歩いていると、後ろから走ってくる音が聞こえた。


「おーい!おはよ、歪!」


誰かというのは分かっていたので、歪は振り向かずに「おはよう」と短く挨拶した。


「今日から高校生だなぁ!」

「そうだな」

「へへっ、ここって柔道強いんだろ?楽しみだな!」

「…それはお前だけだ…朝からテンション高いな……」


後ろから走ってきたのは青柳 直(アオヤギ ナオ)。
小・中学ともに歪と同じ学校で歪の友人。
この高校にはスポーツ推薦で来たという。


「いや、柔道は楽しいんだぜ?一本とった時なんかスカッ!ってするんだ!」

「へぇ…それは僕にも分かるかもしれない」

「は?歪って柔道やってたっけ?」


目を輝かせて歪に同意を求める直。


「いや、柔道の経験はない」

「じゃあ何が分かるんだ?」


そこで、直の目の輝きは失われた。