第一章 『空(カラ)の心』
ピピピピピピピピ……。
目覚まし時計のアラームが鳴った。
それをだるそうに手を伸ばし、止める。
「……朝か」
起き上がったのは10歳の少年……ではなく、高校生ぐらいの青年。
「アラームを電子音にするべきではないな。目覚めが悪い」
青年はそばに置いていた眼鏡をかけ、朝食の準備をする。
食パンを焼いている間に学校の準備。
教科書・ノート・筆記具・携帯・ノートパソコン、その他諸々を鞄に入れ、焼き上がったトーストを食べる。
その時、先ほど準備した鞄の中から音楽が流れだした。
「……誰だ、こんな朝っぱらから」
明らかに面倒そうな顔で、携帯を取り出し、ディスプレイを見るとそこには『寒空 寒夜(サムゾラ カンヤ)』の文字。
短く溜め息をつき、通話ボタンを押す。
『おはよう、歪』
電話の向こうから感情の込もっていない声が聞こえた。