「行ってきまーす!」


いつも通りの朝。

母親にそう言い、
いつも通りの駅で
いつも通りの時間の電車に乗る。



今日も、いた…!



黒くて清潔な感じの男の人。

3ヵ月前ごろから、いつも同じ電車の同じ車両で会う。

今日も、白いシャツが似合うなぁ…

そう思いながら、あの人を見つめる。


そう、私、あの人に恋をしてるんです──


もちろん、年齢も、何をしているかも、名前すらも知らないけど。

だけど、3ヵ月前のあの日。

恋をしたことのない私が、なぜかあの人に目を奪われて──

思わず見とれてしまった。

そこからが、恋の始まりだった。

毎日同じ電車の同じ車両で、「運命」なんて少し浮かれてたりもする。

消極的な私は何もせず、ただ見てるだけなんだけど…

でも、それだけでも、何だかあったかい気持ちになれて幸せになれる。