「先生・・・。」

いつもの白衣のように白く、大人びた柄の入ったTシャツに、落ち着いた色のジーンズ。
今時のダメージジーンズなんかではなくてシックでタイトなものだった。
いつも長く見える足が今日は更に長く見える。


待ち合わせのカフェで先生はコーヒーを啜り、足を組んで座っていた。
外にある丸い2人掛けの席。
とても絵になっていて声を掛けるのには少し勇気がいるほど。


街を歩いている女の子はどの子もチラチラと先生を見て、「カッコいいね」と話している。
確かに、先生はカッコいい。
ビターな大人の香りが漂う雰囲気の先生。
そのメガネの奥の目がとても綺麗だった。


「ん?あぁ、西条さん。」


先生はアタシを見ると微笑んだ。


「先生今日は一体・・?」
「食事だと言っただろう?」


先生は立っていたアタシに微笑んで「座るといいよ」と言って片手に持っていたコーヒーをテーブルに置いた。


「君は何がいいかな?コーヒーかい?」
「ぁ・・・ぇっと・・・。」
「ご注文は?」


アタシが困っているにも関わらず店員がニコニコと笑って聞いてきた。


「あの・・同じ物を・・。」
「かしこまりました。」


店員が軽く礼をしていなくなる。


「それでよかったのかい?」
「えぇ、ここのコーヒー美味しいと聞いたので。」
「ほぅ・・誰にだい?」
「・・・優に。」


先生は「そうかい。」と優しく笑った。
意外なことに「しまった」という顔や態度をとらなかった先生にアタシは驚いた。


「顔色、よくなったね。」
「そうですか?」
「あぁ・・赤みがさして綺麗だ。」
「綺麗だなんて・・・。」


先生は冗談やお世辞を滅多に言わないだけに、とても照れる。


「おまたせしました・・。」


カチャリとコーヒーが置かれしばしの沈黙が流れる。
先生は相変わらずマイペースでコーヒーを啜っては眩しそうに道を歩く人を見ている。
ときどきこちらを見て・・・というか先生を見ている人にニッコリと笑いかけて。