「もしもし?」

『あぁ、やっと出た。』

「やっと、ですか?」

『あぁ、君に何度も電話したんのだが、全く出てくれなくてね。』

「え!すみません、気づきませんでした・・。」

『いや、君を責めるつもりはないんだ。』


先生が電話越しで笑った。


「先生が電話なんて珍しいですね。どうかしましたか?」

『君が心配だったものでね。』

「心配?」

『どうだい?逢えたかい?』


逢えた。

けど、思い出の中の優にじゃない。

本当の、本物の優。

不思議そうに見つめる優を見て笑うアタシ。


「逢えましたよ。」

『そうかい、よかったじゃないか。』

「はい、心配して下さってありがとうございます。」

『いや、いいんだ。それよりも、今度食事に行かないか?』

「食事、ですか?」

『あぁ、いい店があるんだ。今度、行かないか?』


先生の誘いは嬉しいけど、優が・・・。

ちらりと優に目をやろうとするといつの間にか優は隣りに立っていた。


「行っておいで。」と優は口パクをした。

少し痛む胸。


「は、はい・・是非行きたいです。」

『よかった!明日の午後はどうだい?』

「えぇ、大丈夫です。」


先生は『それじゃぁ』と言って電話を切った。