「おじょーさん!!」
奈々は驚いたように顔を上げた。
とたんに耳を塞いで喚きだす。
「やめて!もうやめてよ!」
聞こえていることを確信して俺はあの時と同じように声を掛ける。
「あれ?聞こえなかったのかな・・。おじょーさん!!」
頭を振る奈々。
うっすらと俺の手がはっきりと輪郭を帯びていく。
「嫌!誰!もうやめて!」
ポン・・・
ようやく奈々の頭に触れた。
「お嬢さん?」
俺は嬉しくて思わず奈々に笑いかける。
「嫌、嘘。」
奈々は声に気づいたのか驚いて涙を止めたのがわかる。
「奈々」
俺は奈々に気づいてもらえたことが嬉しくてもう一度呼ぶ。
「ゆ・・・・ぅ。」
奈々はゆっくりと振り向いた。
俺は嬉しくて笑う。
「奈々。」
もう一度名前を呼んだ。