「やっぱり、苦しいや。」


頬を伝う涙をどれだけ拭ってやりたいことか。

触れても涙はすくえず奈々の頬を滑り落ちる。


「強くなろうって思ったのになぁ・・・。」



「優。逢いたいよ。帰ってきて。」



俺はここにいるよ。

側にいるよ、帰って来たんだ。

ねぇ、こっち向いて?

気づいてよ




「優。もう一度名前を呼んでよ。」


「奈々・・・。」



俺は奈々の名前を呼んだ。


「優・・?」


奈々はバッと振り向いたけれど俺には気づかない。


「優・・馬鹿。」


また涙を流し始める。

泣かないでよ、俺はここにいるんだから。



「奈々」


もう一度名前を呼んだよ、奈々。

俺に気づいて。



「馬鹿だよ。からかわないで。」

「冗談じゃないよ!!俺いるんだ!!俺は!!」

「馬鹿ー!誰よ!誰がアタシをからかうの!?もうやめて!!」


奈々は俺に気づかずにとうとううつ伏せになって泣き出した。



まるであの時と同じ。

もう一度あの時と同じように呼んでみようか。