白線の後ろまでお下がりください。」
列車から降りた奈々を迎えた駅長さん。
「優。ついたよ。」
奈々は写真の中の俺に見えるように、カバンから取り出して掲げた。
そんなものしまっていいよ。
俺は隣で同じ景色を見ているよ。
ここは思い出の海。
あの日奈々に出会った場所。
奈々は大きく息を吸って歩き出した。
「ふぅ・・・。」
堤防はあの日と変わらない天気だった。
「優、来たよー。」
なんて写真を取り出して隣に置いた奈々。
「気持ちいいね。」
「そうだね。」
「思い出すね。」
「あぁ・・。」
俺が返事をしても奈々は返してくれない。
聞こえていないことが苦しい。
奈々はごろんと横になって空を見上げる。
「優・・寂しいよ。やっぱりここに来たら苦しくなるね。」
赤くなっていく奈々の目。
その目には涙が溜まっていく。
「覚悟はしてたんだけどなぁ・・。」
奈々の声が涙声になる。
あぁ、触れたい。
その頬を撫でてやりたい。