優がいなくなった。
アタシの胸に大きな穴をあけて。
「奈々、遊びに行こう?」
大学の友達に誘われてもアタシは「遠慮しておくよ」と答える。
友達は気の毒そうな顔を浮かべどこかに行く。
「優。」
まだつけているペンダントを握りしめ呟いた。
どこかで優が見てくれている気がしていたから。
「じゃぁね。奈々。」
道行く人が次々に去っていく。
「じゃぁね。」
笑顔で返した。
だけど、本当の笑顔ってどんなんだったっけ?
「西条さん!!」
後ろから声を掛けられ振り返る。
そこには大学の先生が立っていた。
「北川君のこと、残念だったね。」
教室に案内され座ると先生が言った。
「北川君は秀才で将来は教授になれることも夢じゃなかったのに・・。」
先生は唇を結んで俯いた。
「優は・・・。」
「ぁ・・すまない。君に辛い思いをさせに呼んだわけじゃないんだ。」
先生は少し下がったメガネを押し上げ首を振った。