「あ~おいしかった!」

「そうですね」


ポンポンとお腹を叩いていると、蓮まで一緒に叩いてきた。

バチッ



「……痛いんですけど」

「自業自得」

「……」

気が抜けない。
やっぱり距離をとったほうが良かったかなあ。さっきも親の前であんなことされたし……うぅ;



「セクハラの罪でいつか訴えてやる」

「僕が罪を犯したと言いたいんですか」
「そーですが」

「それを言うなら……可愛い真央さんの存在自体、罪でしょう」

「は、はい?」


今、劇とかであるような……ものすっごく歯の浮くような甘いセリフが聞こえたような気が。

ぶるっ。
悪寒が!

「蓮、最近大丈夫?」

「何がですか」

「えっと、ココ、とか」

指で頭を指すと、蓮はニッコリ微笑んで

「全く、可愛らしい人ですねぇ……」


あ、

ヤバイ。


「……怒った?」

「別に」

魔王、降臨しちゃう?それだけは止めてよそれだけは!


「だよね。魔王がこんなことで怒るなんて無いしね」

「誰が魔王ですか」
「何でもないです」

魔王、微かに眉が動いた気がする。
う……またお仕置きは嫌だ。


やっぱりここは

先手必勝。

「ねぇ蓮」

「はい」

「今度は蓮の部屋まで競争しない?」

「……はい?」

ポカンとしたように見えた蓮を無視して、ヨーイドン!と走り出す。

「負けたらアイス奢りね!」

近くにコンビニがあるかどうかなんて知らんがまぁいいや。
「……仕方ないですね」

「あっはっはー!早くしないと置いてくよ」


振り向いて、蓮が走り出したのを確認する。
わぁ、さすが魔王、速い。

慌てて前を向いて、大広間的部屋にある階段を駆け上がった。