「指輪とか?」

「いいえ」


何だろう。家はママが自分で買ったし、車もママが買った。特に高い鞄も無いし……。宝石なんか持ってないしなあ。


「分からないかしら」


「うん」


また、ふふ、と笑う。






「真央ちゃん。あなたよ」




え?


私?



「圭介はね、真央ちゃんという、賢くて、可愛らしくて、優しい、素晴らしい女の子をプレゼントしてくれたの」


嬉しそうに、にこやかに話すママを見て
目が熱くなった。

「真央ちゃんが今ここにいるのも、私とお喋りしてくれてるのも、全部圭介がいたからなのよ」

だからね、と続ける。


「真央ちゃんにも、それをちゃんと分かって欲しかったのよ」

「……ん」



目が熱くて、鼻の奥が痛くて

声を出したら涙が溢れそうだった。


「でも、圭介が出ていった直後は、しばらくショックで立ち直れなかったの」


ふぅ、と息を吐く。

「真央ちゃんが赤ちゃんのときに、何度も自分に言い聞かせるように"圭介は悪くない"って言ってたわ」

可笑しそうに笑うママ。


「今じゃ懐かしい思い出ね」



ニッコリ笑うママが眩しくて、綺麗で。

本当に、私はお母さんが大好きなんだと改めて実感した。



「ママは、強いね」


「あら?そんなことないわよ」

クスリと笑って、立ち上がる。

「そうねぇ……。真央ちゃんにも、この気持ちがわかる日が来るわ」


「気持ち?」


私が聞くと、ママは穏やかに答えた。




"好きになった人じゃないの…"


"一度愛した人は、一生愛し続けたいと願う気持ちよ"