「蓮?」






頬に当てられたのは、蓮の細い指だった。

こいつ、大きいくせに、こんなに繊細な手だったんだ。

白くて、綺麗。




「あ、蓮。丁度良かった。蓮は何処に行きたい?」


蓮は、にこやかに聞く昌彦さんを無表情に見つめる。


「そうですね…。海か広い湖に行きたいです。なるべく涼しいところで」



「じゃあ、カナダかな?またはヨーロッパだね」


カナダにヨーロッパか。
蓮っぽいな。


「真央さんは何処に行きたいんですか?」

膝立ちした私を見下ろしてくる。うわ、睫毛長い。


「あ、う~んと…私、よく外国のこと知らないから…」

お任せします、と言うと、昌彦さんは分かったと言うように頷いた。


うん、昌彦さんって頼りになるわ。


その時、スッと蓮の顔が近づいてきて…





「僕的には、真央さんの水着姿が見たいですけどね」






「ッ!?///」



耳元で怪しく囁きやがった!


意地悪な蓮は、赤くなる私に更なる追い討ちをかけた。









「色々やりやすいですし。あ、そうですね。水の中で…脱がしてあげますよ?」










「///こんのっ…」




スケベー!!!///



心の叫びは虚しく頭に響き、蓮はさっさと自分の部屋に戻っていった。




「真央ちゃん?顔真っ赤だけど大丈夫?」

パンフレットに目を通していた昌彦さんは、不思議そうに私を見た。


「だ、大丈夫ですから!」


慌ててそう告げて、台所に逃げる。



蓮の吐息が触れた耳は、しばらく熱が冷めそうになかった。