紫と仲良くテクテク歩いて……



着いた。


海城蓮という大魔王が住む


魔城に。




でも紫という勇者がいれば、あたしは無敵だ!絶対。



扉に手をかけると…

開いてる。


ってことは、もう帰ってきてるんだ。

魔王、部活入ってないのかな。
運動できそうに見えるんだけど。



「お邪魔します」
「ただいま」



広い家に、私達の声が響く。




「お帰りなさい」


蓮の声。
微かに水の流れる音も聞こえる。


「今の、海城蓮?」
紫がヒソッと耳に囁く。
私は頷いた。


ペタペタとスリッパの音を鳴らしながら、リビングに入った。



ん?
なんか美味しそうな匂い。


「お友達ですか」

チラリと声のしたほうを見ると、黒いエプロンを着けた蓮の姿が。

「すみません。勝手に台所使ってました」

蓮はニコリと微笑む。

う…///

その顔に、ちょっと弱い。


「あ、だ、大丈夫。夕ご飯作ってくれてたの?」
「はい。ハンバーグなんですけど、好きですか?」
コテン、と首を傾げる蓮。

ハンバーグ!?

思わず笑顔になるのが分かった。

だって、ハンバーグ大好きなんだもんッ!
もんもんッ!!



「大好きッ!」


そう言って、無意識に蓮に近づく。


どのくらいの大きさなのかなぁ。
私、大きいのがいいな。


「ねぇ、私おっきいのがいぃ……?」





あれ?


顔を上げると、そこには頬が赤くなった蓮。
え、あの無表情無感情な蓮が?
赤くなってる?
何で?

じっと見つめていると、片手で口を覆いながら、気まずそうにそっぽを向いた。


その様子に


トクン、と

一瞬だけ、胸の奥が痛いくらいに苦しくなった。