午後6時半。



カレーの入った鍋が蓋を揺らして、食べ頃だと知らせる。


未だママと昌彦さんは帰ってこない。
まぁ、ママはいつものことなんだけど。
そういえば、昌彦さんは何の仕事をしてるんだろう。

2人分のお皿を出しながら考える。


「おいしそうですね。カレーですか?」

カウンター越しに話しかけてくる蓮君に、さっきの悪戯な笑みは全く見られない。

「うん、カレー」


「お話ししてくれるんですね」


蓮君は少し驚いた顔をする。


「…もう諦めました」



溜め息混じりにそう告げる。
だって、何を言ったって意味ないんでしょ?嫌だッて言っても、遠慮なく触ってくるんだから!


「良い判断です」


「…変態」


「なんとでも言ってください」


ニッコリ笑う男に、心底呆れた。