●●真央side●●
目を開けると、そこは海だった。
エメラルドブルーの海に真っ白でサラサラの砂浜。
それらは夕日に照らされて、更に綺麗な色を生み出している。
暖かな風と波の音に誘われて、私は右足を水につけた。
チャプン、と音がして、水が足首を濡らす。
海底の砂がサラサラと足を包み込んで気持ちが良い。
安らかな気持ちで、左足も踏み出した。
膝下まで水が濡らす。
歩み出す度、海からダイヤモンドのような水飛沫が舞う。
夕日に照らされて、キラキラして凄く綺麗。
それがもっと見たくて、どんどん海の中へ入っていく。
気持ち良い。
なんて、心地よい海なんだろう。
ふ、と息を吐き出して水平線の向こうを見つめた。
ああ、もうすぐ日が沈む。
オレンジ色の太陽は、もうすでに半分以上沈んでいた。
……早く、行かなくちゃ。
夜が近づくにつれて、私は沖の方へ急ぐ。
早く、行かなくちゃ。
もっと奥へ、奥へ……。
私の頭には、何故か『海の向こうに行く』ことしか無かった。
腰を海水が濡らす。
歩みを進める足は、白い砂にだんだんと沈み込んでいく。
体の感覚が次第になくなり、海に溶け込んでいくような気持ちになった。
早く、行かなくちゃ……。
私の脳は、すっかりその言葉に支配されていて。
……後ろを振り向くことを、忘れていたんだ。