「入ってきていきなりそれは無いでしょう」






―――紫さん








長くて美しい黒髪


白い肌


優雅な身のこなし



見覚えがあった。






初めて、家に遊びに来たとき


こんなに綺麗な子がいたのかと


思わず目を疑いましたからね。




まぁ恋のライバル的存在なんですけどね。





「あんたを見た瞬間、それしか思い浮かばなかったわ。失礼」


「今日は何しに来られたんですか」


「同い年なんだから敬語はやめない?」



眉を寄せる彼女に首を振る。


「これは僕の癖ですから」



「あら、そう」




きちんと黒いスーツを見に纏っている紫さん。


わざわざ着替えたんでしょうか。




「それで、スーツを着てまで僕に何を言いに来たんですか」



「察しなさいよこのたわけ者」




それはマイブームなんでしょうか。



他の言葉も使いましょうよ。







「真央のことよ、真央の!」


「ですよね」




紫さんは絶対何か言いに来るだろうとは予想していた。



真央さんの親友ですから。






「あんた、真央と離れるんですってね」



キッと睨み付けられる。






その瞳を見て、真央さんのことを本当に大切に思っているんですね、と思った。



「はい」




「しかも理由が、幸せにできないから」



「はい」






彼女は僕を見て、












え。















「ふざっけんなぁぁ!!」








ドガシャーーーン