ふと。 電話が鳴った。 「―――様がお見えになっております」 物思いにふけっていたので 名前なんて頭に入らない。 「お通ししてください」 受話器を置いて、動き出す。 ライバル会社の営業だろうか。 今来てほしくないですね。 本当に。 コンコン、と聞こえたノックの音に どうぞ、と答えた。 「失礼致します」 開いたドアから現れた人物は あれ。 見覚えがありますね。 相手はゆっくりと微笑み、 そして 「たわけ者」 ……;