●●真央side●●




グイッ



制服の袖で目尻を拭う。うん、そろそろ止まったかな。

それと同時に、ガラリと教室の扉が開く。

「真央ー!待たせちゃったわね」

「おつか……」


お疲れ、と言おうとしたのに。
ヤベ、私超鼻声だ。
か、隠さなきゃ;


「(鼻をつまんで)お疲れぇ」

「……真央」

「な、何」

「鼻。何?鼻血でも出てるの?」

あ、その手があった!

「そうそう。ティッシュティッシュっと……」

慌てて片手で鞄を探り、ティッシュで鼻血用のあれを作った。あれだよあれ。こより?……とにかくあれだ。
それを鼻に突っ込んだ。

「……真央」

「え?」

「突っ込んでいいかしら」

「え?何」

「何で両方塞ぐの」
「う……両方から出てるんですー!!」

苦しい言い訳だけど、これしかない。

「全く、本当に乙女なのかしら」

「うるさいっ」

呆れる紫の背中を押して、廊下へと連れ出す。

早く、帰ろう。
少しだけ勇気が出たから。今なら蓮と向き合える気がするんだ。


帰路を早足で歩けば、紫が変な目で見てきたけど気にしない。
無性に、

どうしようもなく

蓮に……会いたい。