「そういう、こと……」


相手のことを大切に考えるからこその判断。


「ああ。俺だったら諦めて、いい男見つけろって言うな。そんで普通に恋愛して、普通に子供産んで……普通に、平和に過ごして欲しい」



「そ、っか」






蓮は……もしかしたら。

そう考えて、私から離れたのかもしれない。


自意識過剰かもしれないけど。そう確信した。
だって蓮は、誠実なジェントルマンだもん。

何気なく私に気を使ってくれる、無表情だけど優しい優しい男の子だもん……。

ジワリと熱を持った瞳に溢れだした涙。止める術なんて分からないけれど、これは悲しい涙じゃないことは分かるから



止まらないで、いいや。

「吉岡?」

「ありがと、梶谷君」

「……あぁ」


梶谷君はそれ以上何も言わずにいてくれた。

そして私に近づいて、


ポン、と頭を撫でてから、教室を出ていった。


一人にしてくれたんだ。
梶谷君も、優しいね。

そう思ったら余計に涙が止まらなくなってしまった。







私、今




無性に



どうしようもないくらい




蓮に

会いたい。








梶谷君のおかげで気づけたんだから。

蓮の"覚悟"を。








でも


その前に涙を止めなきゃ。

紫に心配されちゃうよね。