トンッ



軽くだけれど固い物に当たり、背中が壁についたと分かった。




両腕は蓮君に押さえられていて。




うそ、でしょ?
何これ何これ何これ。


逃げられない。




そう思うと、恐怖で頭がサァッと冷たくなった。



嫌、嫌だ。怖い。



「は、離しッ「怖いですか」




ゾクッ

耳元で蓮君の声が響く。


いつもより少しだけ低い声。





ドクン、ドクン、ドクン…


心臓が激しく動きすぎて胸が痛い。




「僕が怖いですか」


心臓が破裂しそう。


体が震えて、今にも崩れ落ちそうで。




「ッ…当たり、前」

伏せた睫毛を涙が濡らす。




怖いよ。怖い、怖い…。




滲んでいく視界。



鼻につく甘い匂い。



手首に感じる、男の人の手。




頬をくすぐる蓮君の髪。




その全てが、恐ろしく感じられる。





「僕は、真央さんと同じ人間です」




何も怖くないと囁かれて、余計に足がすくんだ。




同じ人間でも、怖いものは怖いんだよ…。