ポカンとしながら私の話を聞いていた梶谷君だったけど、今はウンウン唸りながら考え込んでいる。

「世間のこととか、親のこととかも考えて……」

「……う~ん」

「将来のことも……」

「……」

そんな立ちはだかる困難がたくさんあったとして。


でも、2人は


「でも、お姉さんと梶谷君は……心から愛し合っていて……」


心から求めあって……。






ああ私は、何を語っているんだろう。



「難しい話だな」

「うん。そうだね」
「でも俺なら、











諦める」





え……。


「諦め、ちゃうの?」

ガツン、と脳天に衝撃。
蓮に言われたわけでは無いのに、ショックを受けた。


「諦める」


「な、何で?」


「多分、どちらかが俺様とか自己中じゃなければ、誰もがそうすると思う」


誰もが諦めるの?
何でそんな悲しいこと……。


「無理矢理、2人の愛を世間にぶつけたって、返ってくるのは批判的な態度や軽蔑だけだ。プラスの反応なんて皆無だろ、きっと」


「そんな……」


「社会は残酷で怖いんだ。だから、俺は諦める」


「そ、そんなの」

酷いよ。




「吉岡、考えてみろよ」


溜め息をついて、梶谷君は私を厳しい目で見る。

「いくら俺が相手を好きでも、社会が認めなきゃ相手は傷ついてくだけなんだ」

紙パックを持った手が、ピクリと震えた。


「愛があればいいなんて、通用しねぇんだ。そんなの、自分は平気でも相手は耐えられないかもしれない。大切な女性なんだから、酷い目になんて合わせたくないだろ普通」


「……」


「男なら、相手を幸せにしてナンボだろ。だから幸せにできないという不安があるなら、諦めた方がいい」