「……」


でも、暗くなったって仕方ない。兄妹というのは何したって変えられない事実。変えられない、こと。


「吉岡、面白いな」
「……何でですか」
「さっきからコロコロ表情が変わってる。何考えてるか大体分かるぞ?」

「え?」



―――真央さんが何考えてるかなんて、大体分かります。




蓮とおんなじ。

チクリと胸が痛くなる。


「やっぱ私ってそうなんだ……」

「やっぱって?」

梶谷君は面白がるような顔をして聞いてくる。なんだ、梶谷君だって、よく表情変わるじゃない。
怒ったり、不思議そうにしたり、焦ったり、呆れたり、笑ったり。



私は一体、蓮の表情をいくつ見れたんだろう。
片手でも数えられるかな?……ううん、それは無理だ。蓮はいつも無表情だけど、でも。ちゃんと見ていれば、僅かに変化していた。

……ような気がする。


これも、蓮と離れてから気づいたことだけど。



全部、気づくの遅いよね。馬鹿だな私。
早くこの気持ちを話していれば、こんなことにはならなかったかもしれないのに。後悔してももう遅い。

でも、もし告げていたら……。
蓮は、受け止めてくれてたのかな。
妹からの想いを、受け止めてくれた?

禁断の恋愛だとしても、私と一緒にいる覚悟をしてくれた?

蓮は……どうなの。分からない。



あ…。

「梶谷君だったら、どうするかな」

「……俺の質問無視か。チッ…何が」

「例えば……梶谷君にお姉さんがいたとして、梶谷君はそのお姉さんに特別な感情を持ってるとする。そしてある日、そのお姉さんに告白されたら、どうする?」


妹、とは怖くて言えなかった。
察せられるのが怖いからなのか、妹だと嫌な答えが返ってきたとき、ショックが大きいからなのか。
分からないけど、怖かった。


「それは……」