ショックで口をパクパクさせる私。
え、何で。何で知ってんのコイツ。てかこの人誰?え、何で。

「何で……知ってるの」


絞り出した声は自分でもビックリするほど細々としていて、相手に届いたかどうかは分からない。




……いや、届いたっぽいな。



「それは……」



男は、グッと言葉に詰まる。


でもしばらくして口を開いた。

「つーかお前さ、俺の名前知らないんだよな?知りたくねぇの?」

「いや別に」

「チッ……即答かよ」


舌打ちしないでください。怖いです。
ジャ●系な顔してるくせに、短気だし中身はヤンキーっぽいのかな。それは言い過ぎか。


「興味、ないんだ?」

「そそそうですが;」

はっきり言って良いのかなぁなんて怯えながら答えると、男は黒髪を掻き上げて、盛大な溜め息をした。



「……優哉」

「へ?」

突然ポソリと言うものだから聞き逃してしまった。

「俺の名前ッ……梶谷優哉」

「はぁ…」

カジタニユーヤさんですか。カジタニユーヤカジタニユーヤ……。


あ。梶谷って聞いたことあるなあ。
そういや、先生が出席とるときに言ってたわ。よく覚えてた私!えらい。


「梶谷君か。苗字なら知ってた!」

「アホ!同じクラスなら当たり前だ!」
アホ言われた…;

「じゃあ梶谷君、私の名前知ってるんだね」

「だから当たり前だ!さっき吉岡って言っただろーが」

「あ」


それで思い出した。


「オレンジジュース」

「あ?」



梶谷君が持っている、オレンジ色の紙パックを指差す。


「それ、欲しいな」
「……あぁ」