ピチピチ、と鳥の鳴き声。
サワサワ揺れる木々。



「おか、しい……」

たった数週間しか経ってないのに。
ショックで止まった脳内は、無音の蓮の映像がリピート再生されていて。
顔は出てくる。匂いも覚えてる。
それなのに何故か、声が……無い。

「吉岡?」

「違う」

「え?」

「違う。違う違う……」


吉岡じゃないよ。
蓮は、真央さんって呼ぶんだ。
違う。
違うよ。


「……違う」

ポツリと呟いた私を見て、男子は溜め息をついた。



その溜め息で

ハッ、と我に返った。


「あ、えっと、その……ごめんなさい。変なこと、呟いて」

とりあえず、謝った。
違うなんて言われて、きっと意味不明だったに違いない。
私ってば何を考えてたんだろう。



「別に、平気」

「……」

3メートル程離れている男子をまじまじと観察する。
……綺麗な黒髪以外、蓮とは正反対だ。
切れ長の目をもつ蓮と違って、目が大きくて丸っぽい。鼻は平均的な高さ。唇は程よい男っぽい厚さと色。
制服はイマドキな感じに着崩している。清潔感&シンプル(でもカッコイイ。ムカツクが)な蓮とは全然違う。
全体的に、雑誌に載ってる男の子みたいな外見。(世間で言うジャニー●系です)

モテるんだろうな、なんて呑気に思ってたら。




「なぁ吉岡」

「は、はいぃ…」

「俺さぁ………」






クシャリと笑顔を作って





この人は、


なんとも







ホントになんとも












信じがたい言葉を口にした。