「ッ…待って!」


大声を出したつもりが、寝起きのせいで普段よりも小さい声しか出ない。

「蓮!待って!」


足音は止まらない。
どんどん階段を上がっていく。

ようやくリビングから脱出した私は、階段に足をかけた。



でも。




パタン、と聞こえた扉の音に、止まった。


「ッ……」


拒絶、された。



「なん、で……っ?」


固まった体は、階段を上がれない。
見えないバリアが、私を拒む。


しばらくして、私はリビングに戻った。
またソファに腰かけると、熱くなる瞳。

ッ……泣いちゃ駄目だ。泣いちゃ駄目。
私達は兄妹で

特別な感情なんて持っちゃいけない。


だから



私のことを好きだと言ってくれた蓮は、



もういないんだ。







泣いちゃ駄目。
泣いちゃ駄目だ。

泣いたら私は、止まらなくなる。
悲しみがポロポロ溢れだして、きっと止まらなくなるから。
私は、泣かない。
泣きたくない。











ねぇ蓮。

一つ、教えてよ。

どうして君は



現実でも

夢の中でも





私を、避けるの?