「本当に?」
「何にもないってば!」
「本当に本当に本当なのね?」
「うん」
「……納得いかないわね」
「だからぁ~!;」
と、また冒頭に戻る。
さっきから、お昼休みまるまるこのやりとりをしている。
い~かげん、解放してくれないかなあ。
「紫、もういいでしょ」
「……納得いかないわ」
「はぁぁ…」
事の始まりは、朝。私が目の下にクマをつくってきたことから始まった。普段、ベッドに入れば5秒でオヤスミ♪な私が、寝不足だなんてあり得ないと、紫が心配をしてくれたわけで。
まあ……ここ1ヶ月近く、ろくに寝れてないからなあ。
というか寝れるわけがない。だってあんなこと言われて、安眠できるわけないじゃん?できる人いんのかいな。しかも悩みの種と同じ屋根の下に住んでいるし?隣の部屋で寝てる日もあるだろうし?
というか避けられてるし……。
家に帰らなくなってるし……。
毎晩毎晩、寝れなくても仕方ないと思う。
そんな私にいち早く気づき、『海城蓮と何かあったの?』と聞いてきたのが紫。かなり勘がいい我が親友。何で蓮のことだってわかったのかなあ。
私は複雑な気持ちで、目の前に座る髪の長い女子を見つめた。
「真央。本当に何にも無いの?」
「無い」
「……」
紫は整った眉をひそめる。その顔に、罪悪感が生まれた。
何にもないわけないけど……でも。
言うわけにはいかない。私の心がそれを咎める。
蓮の事を考えると、話せない。あの切ない顔が脳裏に浮かんで……。