「真央ちゃん、ママ、昌彦さんの出張の付き添いで何週間か家空けるわね!」

「あ……そう」

「ママ寂しいわぁ!真央ちゃん、グレちゃダメよ!ママはちゃんと真央ちゃんのこと愛してるからね!(泣)」


「毎度毎度大袈裟だなあ……;グレないし、いつものことだから大丈夫。お仕事頑張ってきて」

ヒシッと抱き着いてきたママをべリッと剥がす。

「うんっ!行ってくるわね!」

「昌彦さんの足引っ張んないようにね」


アイラブ真央ちゃ~ん!なんて叫びのあと、玄関の扉が閉まる音が聞こえた。


「ふぅ……」


さて、どうしよう。


あ、別に家事とかお金のこととかを心配してるんじゃなくてね?

「どうしよう……」

蓮のことなんだ。心配なのは。




なぜならあの日……事実を告げられた日から、蓮は私を避けまくっているから。

兄妹だからなのか……理由は全く分からない。
そう、はっきり言って全く、分からないのだ。


あの日以来私は、蓮の顔を見てないし、声も聞いていない。

昌彦さんによれば、友達の家に行ってるとか。

でもママによれば、社長の仕事を手伝ってるとか。


まあつまり……家にいる日が急に激減したのだ。


「そこまで避けるかなあ……」



考えに考えて、行き着く先は結局……。


「嫌われちゃったかなあ」



いつもここで思考は止まる。壁にぶつかったみたいに、コツンと。


だからやっぱり、それが答えなのかもしれない。





でもまだ、頭の隅っこで期待している自分がいるから。


諦めきれないんだ。