「あき……?」









「かおり……?」









「おいおい、どういう事だよ! 日野がヴァンパイア鬼って……」
大輝がそう言った。
私だって聞きたい。
どういう事?
「香織?
今日、何で来なかったの?
待ってたのに!
で、仕事で来た先のヴァンパイアの屋敷に、何でいるの?」
あきが低い声で聞いてきた。
「ごめんね……。
急に呼び出されて、それで、連絡するの忘れてたの……。
ホントにごめんね!
でも、何であきがヴァンパイア鬼にいるの?」
私は少し声のトーンを下げていった。
「何でって、親がヴァンパイア鬼にいて、さらに、
ヴァンパイアが憎いからよ!
香織こそ、何でヴァンパイアの屋敷にいるの?」
「私は純血のヴァンパイアで、ボスの命令だったからここにいるのよ!」
私は強い口調でこう言った。
でも、本心はあきのヴァンパイアは憎いという言葉で悲しみに溢れていた。
すると、あきが笑いながら言った。
とても悲しい事を……。
笑いながら……。


「最悪! 今までヴァンパイアと仲よくしてたなんて! 早く、
殺さなきゃ!!」


「やっぱり、私のことを、殺すの? ヴァンパイアだから?」
「あたりまえでしょ! いくら友達だろうとヴァンパイアは、ヴァンパイアだもの!」
あきはそう言った。
もう、ダメね。
イラついてきている私を止めることは……。
ごめんね、茜!
私はまた、茜の願いを潰そうとしてるみたい。
本当にごめんね……。
でも、もう止められない。
だから、私はあきを、
殺すわ!
「香織もしかして!?」
大輝が私の顔を見て言う。
でも、無視してあきのほうへ走った。
あきは私に銃を向けてくる。
そしてあきは引き金を引く。
でも、私はそれを避けて、あきの目の前に立った。


「さようなら! 楽しかったわ! あき!」


そして私はあきを、
斬り裂いた。


あきは死んだ。

私が殺したから。

この日は、最悪なことで終わりを告げた。

大事な友達の死は嬉しいことではない。

でも、私自身がやったのに、しょげてはいけないと思い、泣けなかった。

大輝はもちろん泣いていた。

でも、私を責めてくることはなかった。



GW2日目。
昨日は最悪な日だったから、今日はゆっくり家で本でも読もうかな〜?
それとも、楽しむ為にショッピングに……。
これはダメね。
1人で行ったら、確実に誰かの血を吸すっちゃうわ!
じゃあ、大輝について来てもらう?
でも、何かやだなー。
どうしよう?
何すればいいんだろう?
う〜ん……。

ピピピピ、ピピピピ!

携帯の音が鳴り響いた。
誰かからメールかな?
私は携帯を開いてメールをみてみると、
『煉(れん)です!
今日、一緒に遊びに行かない?
返事まってるよ!』
煉は私の友達で、ヴァンパイアです。
煉と一緒ならいっか!
行こっと!
『香織です♪
OKだよ!!
いつものとこに、9時に集合ね★
また、後でね!』
送信と!
これでよし!
あとは準備するだけね。

そして、楽しく、辛いGW2日目が幕を開けた。

今は9時5分前!
いつもの、音楽の広場に着いていた。
もちろん、煉はもう待っていた。
いつものことだ。
いつも、煉は私より先に来ている。
私がどんだけ早く待ち合わせ場所に着いたとしても……。
煉は瞬間移動が得意で、何故か私の居場所を感じることができるみたい……。
まぁ、ヴァンパイアには色々能力があるからね。
私はたくさんの能力を持っていて、大輝は暗示をかけるのが得意なんだ。
「やぁ! 久しぶりだね。香織。どうかしたの?」
私がしゃべらなかったせいで、心配してるみたいね。
飢えてるのだけは、悟られないようにしないと。
「ううん! 何でもないよ。会えて嬉しい!」
「そうか! 僕も嬉しいよ!」
そう言って、煉は嬉しそうに微笑んだ。
「さぁ、おいで! 僕が楽しいところへ、連れていってあげるよ!」
「ありがとう! ちなみに、どこへ行くの?」
私は煉の顔をのぞきこみながら聞いてみた。
「秘密だよ。そういえば、大輝には、ちゃんと遊びに行くことは伝えてあるのかい?」
私に目線をあわせて、探るように聞いてきた。
煉は180身長がある。
それに比べて、私は160しかない。
でも、そんなのは気にしていなかった。
「言ってない!」
私がそう答えると煉は、満足したのか歩き出した。
ずいぶん歩いた気がする。
「着いたよ」
笑顔でそう言って前を指差す。
私は煉の指に、つられるようにして前をみた。

「わぁー!! すごい! すごいわ!!」

私は興奮しながら言うと、
「気にいってくれたかな?」
と、煉が聞いてきた。
「うん。すごく気に入ったわ! とても、素敵な大きな木ね。
でも、何で私が、植物が好きって知ってるの? 大輝にしか言ったことないのに」
私はそう聞きながら、辺り一面に広がる、木の色と花の色を見渡していた。
すると、少し間をおいて、煉が話し出した。
「大輝に聞いたんだよ、昨日。『香織が元気ないみたいだから、いいところがあったら連れて行ってくれないか?』って、言われたんだよ。だから、今日ここへ、来たんだよ。僕も、香織に会いたかったからさ」
大輝は私のことを、すごく心配してるのね……。
心配なんて、いらないのに……。
「そうなんだ。私って、そんなに不安そうな顔してるかな?」
「してるよ、とてもね。不安そうっていうよりも、元気がないって感じかな」
空をみながら、私の質問に答えた。
今は、私の顔を見つめている。
また、探るような目で……。
だから、私はまた、ばれないように笑顔をつくった。
「そっか。じゃあ、もっと元気にならなきゃね!」
私は元気よく、煉に向かって言った。
すると、
「がんばってね。さぁ、ご飯を食べにいこう」
と、煉が言ったので私は、
「うん! 私、ハンバーガーが食べたいわ!」
と、答えた。
そして、公園を後にした。
少し歩いたところで、ハンバーガーショップに入った。
注文して席に着くと、煉が話掛けてきた。
「ねぇ? 香織の家大きいだろう? 僕を香織の家に置いてくれないかな?」
いきなりそんな事を聞いてきたから、喉にハンバーガーが詰まりそうだった。
どうにか、詰まるのを阻止して、
「どうして、そんなこと聞くの?」
と、聞いてみる。
「実は、僕のお母様とお父様、今凄く仲が悪くて、たまに僕を巻き込んでくるんだよ。だから、お母様とお父様が仲直りするまででいいから、置いてもらえそうなところを探そうと思っててさ。だから、聞いたんだけどダメならいいんだよ」
そう言って、窓の外を見つめている。
だから、私は、
「別に、構わないわよ! お父様、今家にいないの、帰ってくることもないだろうし!」
と、煉に訴えかけた。
本当は、寂しさを紛らわせるために、誰かが自分のそばにいて欲しかっただけだった。
お父様が出て行って、一週間くらいたっている。
でも、お父様はぜんぜん帰ってこない。
私は寂しくてたまらなかった。
だから、よかったと、ほっとしている。
すると、
「本当にいいのかな?」
と、煉は聞いてきた。
だから、
「もちろん、いいに決まってるでしょ!」
と、答えた。
煉はそれを聞くと、嬉しそうに顔をほころばせて言った。
「ありがとう。それじゃあ、これから荷物を取りにいって、香織の家に行くよ」
「わかったわ。それじゃあ、またあとでね!」
私は手は手を振りながら言った。
そして、店を出て、家へ帰るために歩きはじめた。
その時だった。


「きゃぁぁぁーーーーーー!!!!」


何かあったのかしら?
私はそう思い、悲鳴の聞こえたほうへ走った。
そこには、血まみれで倒れている二人のそっくりな少女と、血にまみれたナイフを持っている男がいた。
その他には、誰もいなかった。
私はそれを確認すると、二人のそっくり少女に声を掛けてみた。
「ねぇ! 大丈夫?」
「……う……ん、だ、いじょう、ぶ」
「……わ、たし、も」
「じゃあ、少しだけ待てる?」
私が聞くと、二人とも同時にうなずいた。
双子かしら?
そんなことを思いながら、剣を出して男に向けた。
「ねぇ? あなたはこの子達の、父親ですか?」
私がそう聞くと、ビクッとしてい言った。
「なぜわかった?」
「秘密。でも、父親と認めるのね。じゃあ、もういいや! さようなら!」
そして、私は男を斬り裂いた。
男がどうして殺そうとしたのか、理由がわかったから殺した。
そして、少女に視線をあわして聞いた。
「ねぇ? このままじゃ、あなた達は死んじゃうわ。だからね、もしよかったらヴァンパイアにならない?」
そう聞くと、二人の少女が同時に、
「なる」
と、言った。
だから、私は順番に首筋に、牙を埋め込んだ。
二人の少女はなにも言わずに、大人しくしていた。
そして、家へ連れ帰った。
このとき、私はまた飢えを、ひどくしてしまった。
家に着くと、そこにはもう煉がいた。
「遅かったね。どうしたの、その子達」
と、聞いてきたので、
「家の中で話すわ」
と、言って家に入った。
私の家は、広々としすぎていて、一人でいると気持ち悪くなることがある。
それぐらい広くて、空間がある。
煉はそれを知っていたから聞いたんだと思う。
私は少女達をベットに寝かしながらそう思った。
そして、さっきあったことを、細かく、わかる範囲で煉に話した。
「そうなんだ。じゃあ、この子の父親が刺したってことだね。でも、勝手にこの子達をヴァンパイアにしてしまって、よかったのかい? 父親は死んだ、母親はいるだろう?」
私は首を振りながら問いに答えた。
「いないのよ、母親も。この子達を殺人犯から救うために2年くらい前に、死んでしまったみたいで……。父親が殺そうとした理由は、母親を殺されて、一生懸命育てているのに、我がままを言って聞かないから、うっとうしくなったみたい……」
「……そうなんだ。じゃあ、この子達にはもう、親はいないんだね……。可愛そうに……」
「そうね……」
沈黙が続いた。

「喉が渇いた……」

「体が熱い……」

そんな、二人の少女の声が沈黙を破った。
そして、さらに驚くような光景が目に入った。
二人の少女は、同時に相手の首筋に牙を埋め込み、血を与えあっていた。
こんな光景は初めてみる。
私たちは、二人の少女を見守ることしか出来なかった。
何をすればいいのか、よくわからなかったから。