「赤ずきん、おばあちゃんのお見舞いに行って来ておくれ」



ある日、お母さんが私にお遣いを頼んだ。



「おばあちゃんの…?うん、わかった」


おばあちゃんの家は、
町外れにある深い森の奥。
わたしはいつものように、
お母さんが作ってくれた真っ赤な頭巾をかぶった。



「このパンとジャムと果物を持っていってちょうだいね」


たくさんの食べ物が入ったかごを差し出されて、わたしはそれを受け取った。


「はーい。じゃあ、いってきます」


靴を履いて扉を開ける。


「いってらっしゃい」


お母さんに手を振って、わたしは家を出た。


おばあちゃん、元気かな‥。


最後におばあちゃんに会ったのは
半年ほど前だった。
あの時のおばあちゃんは元気そうに笑っていた。



町を出て川沿いをずっと歩いて行く。


少し歩くと森が見えてきて、
わたしは早歩きで森の中にはいった。



たくさんの木で太陽の光が遮られた薄暗い森の中。少し肌寒くて腕を摩った。


ここはいつも肌寒くて薄暗いから
一人で歩くのは結構怖かった。




早くおばあちゃんに会いたい‥。



薄暗くて足元があまりよく見えないなか、わたしは早歩きをし続けた。


薄暗い森の中にふと、目の前に光が見えてきた。



はぁ‥、やっと花畑に着いた‥。



たくさんの木の中から抜け出すと、色んな花がいっぱい咲き乱れている花畑に着いた。


ここで少し花を摘んでいこう。
おばあちゃんは花が大好きだから‥。



わたしは花畑の真ん中くらいまで歩いて行って、そこにしゃがみ込んだ。


赤に黄色、紫に水色、青に桜色。
色とりどりのたくさんの花を両手いっぱいに摘んで、わたしは立ち上がった。



赤いワンピースのポケットに手を突っ込んで、桜色のリボンを取り出した。



このリボンで花を纏めて‥っと。
できた!



桜色のリボンで束ねられた色とりどりの花束。


そろそろ行かなきゃ。
暗くなってしまう‥。


わたしは花束を左手に抱えておばあちゃんの家の方を見た。



―――――あれ?なんだろう‥?



おばあちゃんの家の方を見たとき、花畑からぴょこんっと茶色い耳のようなものが出ているのを見つけた。


恐る恐る近付いて行くけれど、茶色い耳の主はわたしの気配に気がついていないのか全く動かない。


何故動かないのかしら?
獣は耳が良いはずなのに‥



不思議に思いながらも近付いていく。すると、茶色い耳の主はわたしに背を向ける格好で花畑に座り込んでいた。



「――――誰?」



茶色い耳の主にそう声をかけた。
すると、茶色い耳の主はわたしの方にゆっくりと振り向いでこんにちは"と言った。


振り返った彼はすごく整った顔をしていて、微笑んだその顔はとても可愛らしかった。


「おばあさんのところへ行くの?」



彼は微笑みながら尋ねてきたけれど、私は怖くなった。彼におばあちゃんのことを話したことはない。寧ろ、初めて会ったのにどうして彼がそんなことを知っているのだろうか。そして、彼の目は全く笑っていない。何も映していないような、何の感情も読み取れない瞳。


「何故おばあちゃんのことを知っているの?」



とても深く冷たい瞳をした彼は、何を考えているのかわからない。


「それはね」




彼はわたしの顎をぐっと上にあげて、冷酷な笑みを浮かべた。




「僕と君が、結婚するからだよ。僕はね、君が生まれたときから君のことを知っている。‥全部ね」



そういって彼は、ふふっ と笑った。



ゾッとした。
ここにいてはいけない‥。
そう思わせるには十分なほどに、彼の冷酷な笑みは怖かった。相変わらず彼の瞳は感情を読み取ることができない。



「あなたと契りを交わすつもりはありません」



早く森からでなければ‥!
そう思い、立ち上がる。
そして歩き出そうとしたとき、いつの間にか立ち上がった彼に勢いよく腕を引かれ、体制を崩したわたしは彼の胸に受け止められた。



「‥離してください」



ぐいっと彼の胸を押してみるが、しっかりと押さえ付けられていてびくともしない。

すると、彼はわたしの耳元に唇を寄せて囁いた。



「やっと捕まえた。‥逃がさないよ?絶対に、ね」



逃げるわよ!と言い返そうと思うのに、だんだん意識が遠くなっていく。



完全に意識を失う前に、わたしは彼の低い声を聞いた。






「‥おやすみ。僕のかわいいお姫さま」





END.

【あとがき】
ここまで読んでくれて
ありがとうございます(*^_^*)

変な終わり方で本当にすみませんm(__)m
続編はまた後々、読者様の感想や閲覧数で書かせていただくかもしれません(´∀`)

あきっぽい作者なので、続編を書くとしてもお時間をいただいてしまうかもしれません



読んでくださってありがとうございました(^人^)


2010.05.15〜2010.05.18完結

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