「私も、同じ気持ちです。帰ってくるまで、待ってます。だから……帰って来るって、約束してください」

「約束する」


これまで抱えてきた温かい気持ちを確かめ合うように、私たちはまた、抱き締め合う。


そして離れた後、互いにまた引き合うように、静かに唇を合わせた。






「いってきます」








そう言った彼が町から姿を消してから、長い間、雲も雨も消えていた。


時々雨が降ることはあっても、それはシグレのものとは違うことを知っている。


今になってみると、『雨男』との出会いも、あの日々の出来事も、全ては私の夢だったのではないかと思えた。

一度はそう疑ってみたものの、左手の薬指できらめくシルバーリングが、現実にあったことだと言って聞かない。