部屋着姿のまま大急ぎで外に飛び出した私は、真っ直ぐシグレに駆け寄っていく。


「シグレさん、私──」


近くまで来て歩みを緩めた私の手を、シグレが握ってグイと引き寄せた。


「わ……っ──」


何が起きたのか分からないうちに、シグレの腕の中に収められていた私の体。

肩と背中に、強い腕の力を感じる。


「シグレさん……」


彼はそっと私を放すと、半ば憂いを帯びた眼差しで私を見つめて、ハッキリした声で言った。


「……愛してる」


切なさが胸を突いた、その一言。

驚きと嬉しさのあまり、急に目の下が熱くなる。


「こんな形で言うことになって、ごめん。
今まで一度も言ってなかったから、町を離れる前に言っておきたかったんだ。来年まで会えないけど、それでも俺は──」

「私も」


彼の言葉を自分の声で遮った。