「稜、もう帰れ。明日も学校あんだろ?」
不良に学校あんだろ、って聞く組長は気でも違ったか?
「うち、これでも不良の卵っすよ?学校なんてクソくらえなんすから行かなくてもいいんっすよ」
「あぁ、それもそうか」
なんて笑ってるけど、うちを心配してくれてるんだな、ってことは分かる。
組長と哲さんは、さっきまでの険悪な感じは少し和らいで、殴り合いになりそうな雰囲気ではないから、ちょっと安心。
「……じゃ、帰ります」
くれぐれも、殴り合いなんてしないでくださいね。
心の中で付け加えてバイクのエンジンをかける。
「気をつけて、稜」
背後から哲さんの優しい声が聞こえて、それに対して片手を挙げて応える。
「また会いましょう、哲さん」
ちっちゃい声で呟いてバイクのスピードを上げた。
哲さんからの連絡があったってことは、哲さんはうちのケータイ番号を知ってるわけだからまた連絡があるだろう。
また連絡が来るように、と願う。
哲さんと組長の間に何があったのか。
これを確かめなきゃ気になって仕方ない。
なんて色々考えてるうちに家についた。
「あれ。電気消えてる」
みんな寝ちゃったかも。