「ほら、呼ばれてるぞ?ここは、大丈夫だ。お前が心配してるようなことにはならねぇから」


組長が少し微笑みながらうちに話すから、仕方なくケータイのボタンを押す。


「……もしもし」


多少不機嫌なのは勘弁ってことで。


「あ、稜?俺だけど」


なぁんてまぁ、空気が読めないのやら。


ってか今何時だと思ってるんだろうか。


「あんだよ。どこまで空気読めねぇんだ、てめぇはよ」


低い声で相手を脅すときと同じような雰囲気で喋る。


やっぱ、こいつ嫌い。


「そんな怖い声出さないでさ。今何してんの?車の音、近いから外にいるみたいだね」


「てめぇに関係ねぇだろ、バカ」


「……そんなこと言っていいのかな?俺には逆らわないほうが賢明だと思うけど?」


急にうちを脅すような口調に変わる。


-…なんなんだ、こいつ。


何重人格なんでしょう、この人は。


そんな疑問が頭の中をくるくると回って、電話の相手が栗崎だということを束の間忘れさせてくれた。


でもまぁ、結局電話の相手は栗崎なわけで、まだあいつの自信に満ち溢れた声が聞こえてくる。


「ま、いいや。明日学校でな?」


意味わかんない言葉を残して栗崎は自分から電話を切った。


さっきまでのイライラがまた募る。


自分の拳が軽く震えているのが分かった。