「哲さん……組長……」


そのあとの言葉が出てこなくて、固まってしまう。


どうして、お互いに口調がキツいのかと思ってたけど、過去に何かがあったんだ…。


しかも、うちの所為で。


そう思うといくら不良で人を負傷させたりすることが日常のうちでも、やっぱり胸が痛む。


「すいません!!」


まだ睨み合ってる2人を見て、どうしても居た堪れなく、でっかい叫び声と共に頭を下げた。


「うちの…所為っすよね、2人が険悪なのって……」


「稜……」


何があったのか、全く分からないんだけど、うちが原因らしいと言うことだけは分かった。


だから、謝らなきゃって気持ちになった。


不良のくせに、そういうとこだけは人間味あるよなって聖華によく言われてる。


「何があったのか、うちには全く分かんないっすけど……、すいません」


「……別にお前の所為じゃねぇよ、稜。これは俺ら2人の問題だ。…お前、帰れ」


「え…!?」


唐突に告げられた組長からの言葉。


帰れって…。


このまま放っておけば、2人は何を仕出かすか分からない。


ただでさえ、憎みあっている同士なのに、2人きりになんてさせたら怪我をするだけじゃ済まないよ、きっと。


「そんなこと出来ません。うちもここにいます」


プルルルル___


タイミング悪く、中ランのポケットの中に入れたケータイが震えた。