「お待たせ致しました~」
さっきうちを迎えた店員と同じ人がオレンジジュースを持ってきた。
「ども。……で、哲さん?」
軽く会釈だけして、即効哲さんの方を向く。
「うん。組長と何があったかって聞いたよね、陵」
再度、確認するようにうちの顔を覗き込む。
「えぇ、そうです」
「あれは、3年前。お前が出て行ってから1年後だな」
「4年も前になるんですね、自分がいたのって」
なんて変なところに関心しながら、哲さんの話の続きを促す。
「お前が居なくなって、あんなに明るかった事務所内が嘘みたいに沈んだんだ。知らなかったと思うけど、岸田組の組員の憧れだったんだ、お前」
「まさか……」
嘘でしょ、って笑い飛ばそうと思ったけど、哲さんの目があまりにも真剣だった。
しかもうちが憧れって……。
「初めての女組員だったからな。本気でお前に恋してるやつだって2人や3人じゃなかったよ……」
初めて聞く真実。
あそこにいるときは、確かに楽しかった。
だけど、うちはみんな仲間だとしか思わなかった。
それ以上でもそれ以下でもないって……。
「それから、岸田組を辞めていくやつらが何人もいた。『稜がいないなら、こんなとこ辞めます』ってな」
うちがあそこを去ったのは、事情が積み重なったから。
そのうちの1つしか組員のみんなには言わなかったけど。