6丁目の花梨につくと、一見して元ヤンだとわかる人が窓際の席に座っていた。
もちろん、それは哲さんだ。
ゆっくりとバイクを停めて降りる。
降りてからもゆっくりとした足取りで、店の入り口まで行く。
ゆっくりとドアを開け、足を踏み入れる。
なぜ、こんなにもゆっくりなのか、自分にもわからないけど、きっとこれから哲さんに聞く話の内容が驚くことだと予期していたからかもしれない。
「いらっしゃいませ~」
店員さんの間延びした声が聞こえる。
「1名さまですか?」
ちょっと不思議そうに小首を傾げてうちに聞いた。
「いや、知り合いと待ち合わせ。もう来てるはずだから」
なんか、今日2回目だな、この会話。
そんなことを考えながら、店員さんの横をすり抜け、哲さんが座っている座席へとまたゆっくり歩く。
「……稜」
なぜか少し目を見開いて、驚いたようにうちを見た。
そんなに変わったかな、うち。
「お久しぶりですね、哲さん」
昔と変わらないその顔立ちを見て、安心すると同時に、大分白くなった髪を見て、ふと不安が過ぎる。
「組長と、何があったんですか?」
オレンジジュースを適当に頼んで、店員さんが戻っていくと単刀直入に切り出した。
もう時間も時間だから、長引くことはしたくない。
幸いこの店は24時間営業だ。