でも、どうして哲さんがうちの番号知ってんの?
「稜元気かぁ?」
語尾がちょっと延びるのは、昔から変わってない。
「はい、元気です。哲さんは、入院されてるとかききましたけど」
「あぁ。それなら、もう3ヶ月くらい前に退院してるんだ。でも、組に顔出すのもちょっとなぁ」
寂しそうに呟くように言う哲さんは、やっぱりまだ岸田組のことが忘れられないのだろう。
「今、何してるんです?」
「何も。ただ、金ねぇから適当にバイトしてるよ」
「そうですか」
もう組員ではないうちが組に戻れって言うのはちょっと憚られるし、大きなお世話だと言われるだろう。
「でも…、哲さん寂しくないんですか?」
ちょっと戸惑いがあったけど、口が勝手に動いてた。
「……寂しいよ、そりゃな」
少しの沈黙のあと、哲さんの本気で寂しいそうな声が聞こえて、胸がきゅっと縮んだ。
「じゃ、戻ればいいじゃないですか。組長も心配してましたよ?」
「え!?組長が……?」
まるで信じられないとでも言うような口調だった。
「えぇ。どうしてそんな驚くんです?」
「いや、ちょっとな…」
嘘のようだ。
うちがいたときは、二人は兄弟のように仲が良かったのに、今はわだかまりがあるみたい。