「あんたをそんな子に育てた覚えはありません」
いきなり何を言い出すかと思いきや…。
ま、確かに。
凡人であるおばあからすれば、こんな家系迷惑でしかないよね。
「俺だって母さんに育てられた覚えはねぇよ」
懲りないヤツ。
「今までだって、ずっと親父に育てて貰ってきたんだ。いきなり母親面すんなよ」
「なんですって。あなたをまともに学校に行かせたのは私です」
「うるせー。行きたくもない学校に無理やり行かされてたんだよ、こっちは」
親父とおばあの険悪な雰囲気に呆れはじめたうちらは、とりあえず親父とおばあだけ残して、居間に入る。
「あの2人、どうすんの」
「放っとけば」
いつからいたのか、香矢の言葉でみんな納得した。
「で。三波」
「ひっ……」
うちと母さんに一斉に睨まれて三波がちょっと怯んだ。
「なんであんたはキャバクラなんて行ってたわけ」
うちよりちょっと優しい口調で、母さんが聞く。
「いや、親父に誘われたから」
相手がうちじゃないと分かって安心したのか、軽い調子になった。
「バカ」
一言、母さんの手が三波の頬を打っていた。