「どっか行ったって……どこ行ったんだよ」
誰に聞いたわけでもなく、そう呟くと勢いよく2階に上がり、香矢の部屋のドアを乱暴に開ける。
「稜か。何だよ」
珍しく、勉強してなくて、ベッドに横になって漫画を読んでた。
「三波たち、どこ行ったか知らねぇか」
うちに何も言わずに出て行ったってことは、うちに来てほしくなかったってことだろう。
だから、香矢には何か言ってるんじゃないかって。
母さんに聞いてもきっとわかんないだろうからね。
大して人の話聞かない人だし。
「さぁな。いないのか?」
「だから、聞いてんだろーが」
「何そんなイライラしてんだよ」
どうしてか、香矢にはうちの心境が分かってしまう。
「別におめぇに関係ねぇだろ」
「ま、そうだけど」
「三波と親父どこ行ったんだよ。ホントは知ってんだろ」
香矢はウソをつくのが上手い。
だから、こっちも見抜くのに必死。
「……知らないってば」
「今の間、なんだよ」
絶対、香矢はあいつらの居場所を知ってる。
そう確信したから一歩も下がるつもりはない。