「ドキっとしたっしょ?」


ふざけ半分うちに聞く。


「す…するわけねぇだろーが」


明らかに動揺しかけたけど、そこはやっぱ不良の意地で抑えた。


「ちぇ、つまんねぇの」


やっぱ、遊んでんのか。


って何ちょっとがっかりしてんだよ、うち。


「ほら、さっさと帰んな。もぉ用は済んだんだろ」


「ん~……ま、いっか。稜ちゃんの唇奪えたし」


頭に"♪"をいっぱい浮かべて、上機嫌で栗崎は帰っていった。


深く息を吐いて、緊張を少し解く。


栗崎に不意をつかれるだなんて、うちらしくない。


…あたりは暗い。
8時だもん、当たり前か。


家の正門を抜けて、玄関を上がり、ただいまも言わずに自分の部屋に直行する。


中ランのままベッドに倒れこむ。


どうしても、整理がつかない。


あいつは、本気なの?遊びなの?


恋愛なんてしたことないから、検討もつかないし、キスしたのだって初めてだった。


ファーストっていうらしいけど、その相手が栗崎なんて-…。