「んま、いいんだけど」
怪しく微笑むと、ちょっと前に出てきてさらに距離が縮まる。
「ちょ……」
ヤバっ……。
完全に栗崎にペース崩されてるよ。
頭の中が混乱してきたとき、ふと自分のものじゃない体温が伝わった。
目の前には栗崎の頭しか見えてなくて。
視線を落とすと、目を閉じた栗崎の端正な顔が見えて。
-……キス、されたんだ…栗崎に。
そう理解するまで大分かかった。
栗崎が離れても、唖然とするばかり。
少し目を伏せ気味にしている栗崎に心臓が高鳴った。
ダメ。
絶対ダメ。
こんなやつに……恋心なんて抱いちゃダメ。
自分にそう言い聞かせても、きっと無意味なことはわかった。
けど、まだこの気持ちは抑えておかなきゃ。
きっと、遊ばれて終わるだけだから。