「馬鹿」
小さくそう呟いたうちを、ん?何?って顔をしながら覗き込む。
距離にして、15センチ。
「栗崎」
「ん?」
「近い」
この言葉であっと後ろに引いてくれるかと思ったのに、栗崎はニヤっと笑って更に距離を詰めてくる。
「気づかれちゃった」
意味わかんない言葉を吐いた栗崎が、目の前にいる。
うちとしたことが、ドキっとしてしまった。
いや、ドキっとしたのは顔がこんなに近いことってなかなかないからだよ。
うん、そうだよ。
無理やり、自分を納得させると、栗崎の目をじっと見据える。
「何が目的?」
うちの家を知りたいってこと以外に何か目的がありそうな気がする。
「目的って……お前を手に入れることしかないけど?」
「……だから、あんたに手に入れられるなんてヘマしないから」
このやり取り、何回やればいいんだろう。