「おっと、悪いな。引きとめちまった」
じゃあな、と一言岸田組長は去った。
「あ……お気を付けて!!」
組長の背中に頭を下げて、そう叫んでからうちも歩き出した。
「哲さん……」
我知らず、涙が頬を伝っていた。
義理と人情の組にいた所為か、少ししか一緒にいなかった人でも、心配するんだろう。
……の割には、誰とでも喧嘩するのは、やっぱ血筋かね?
「稜ちゃ~ん!!」
静かに涙を流してるうちの後ろで、一番聞きたくない奴の声がした。
アイツの辞書に、"KY"俗に言う、"空気読めない"って字はないのかな。
ちょっと立ち止まって、背中から殺気を出しながらアイツを待つ。
「あれれ?泣いてた系ですか?」
学校と外とのテンションがこんなにも違うなんて、信じられない。
「てめぇに関係ねぇだろ」
きっぱり一言、また歩き出す。
けど、コイツがめげるわけもなく、うちの後ろを…いや、隣をついてくる。
「泣きたいときは、泣けばいいんだよ?ほら、俺の胸貸してあげるから」
「……失せろ」
チラっと睨んでからさらに足早に歩く。
……いい加減、諦めりゃいいのに。